歯周病の最後はとても重度の患者さんです。Tさんは全体的に骨が溶け出してしまっており、歯はとてもグラグラしていました。通常であればすべて抜歯してしまい、総入れ歯になるような状態だったでしょう。患者様も入れ歯を覚悟していたようです。

歯周病治療の専門医であっても、この症例を抜歯しないで治そうという提案はなさらないように思います。しかし、ここでは針金で上下4カ所の歯を固定し、外科的手術とコラーゲン再生治療、高濃度抗真菌剤などの治療での改善を提案しました。しばらくして、骨が再生し、グラグラしていた歯が固まり始めたように思えます。

Tさんは「今では何でも噛める」と思っているようです。とても固いものを食べることは難しいですが、かなり改善したことは事実のように思います。

私は、患者様の生活の範囲内で満足の出来るところまで改善することも治療の成功だと考えています。外科的な手術や様々な治療によって、とても重症な歯の状態から物を噛むことができるようになるまで完全したことはとても喜ばしいことでしょう。洗浄で炎症が引いていくということも、これまででは考えられないことであったように思います。

患者様が治療を諦めていないのであれば、歯科医はその気持ちに真摯に向かい合い患者様の希望を可能な限り達成するべきだと思います。

医者の第一の使命は患者さんの命を守ることでしょう。しかし、歯科医はどうでしょうか。可能な限りの治療を行わずに、抜歯を提案することはとても安直なように思えてなりません。一生自分の歯で過ごしましょうというスローガンのもとで、安易な抜歯の提案はとても不誠実でしょう。

歯科医は「歯はl本l本が臓器だ」という価値観を持つべきだと思います。そうすれば、抜歯という判断はそう簡単にはできないと思います。